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遺伝子組み換え技術による生体分子の機能と環境応答機構の解明
近年ゲノム解析や遺伝子組換え技術などが話題となっているが、これらの情報や技術は病気の治療や有用物質の生産、環境の修復など、様々な応用が期待されている。同時に、これらの技術は生命現象を分子レベルで解明するための不可欠な技術でもある。特に、多くの生物でゲノム解析が進み、遺伝情報が明らかになるにつれ、遺伝情報に従って作られるタンパク質の機能解明がますます重要な課題となっている。
植物は常に環境の変化に曝されており、生育条件が悪化してもこれに耐える必要がある。したがって環境の変化を検知し、新たな環境に適応する能力に優れている。このような植物の環境への応答機構の解明には、環境変化の検知、その情報の伝達、遺伝子の発現調節、および発現した遺伝子産物(タンパク質)のストレス耐性における役割を、分子レベルで解析する必要がある。またこの環境への応答機構を応用して、環境ストレスに強い植物を作り出すことも可能になる。このような観点から、各種環境要因(温度、乾燥、塩濃度、強光、活性酸素、栄養不足など)のなかで、主に高温ストレス、塩ストレス、重金属ストレス、酸化ストレスに注目し、これに関わる遺伝子の単離、遺伝子組み換えによるタンパク質の改変などを利用して研究を進めている。主な実験材料として、原核生物であるラン藻やモデル植物であるシロイヌナズナなどを用いている。

1. 高温適応および熱ショック応答の分子機構
高温適応の能力を欠損したラン藻の突然変異株における変異を受けた遺伝子の同定とその機能の解析、光合成の高温耐性を制御する遺伝子の検索と光合成の高温適応の分子機構の解析、低温環境に生育する生物の熱ショック応答機構の解析を行っている。また、これらの機構を応用して通常の温度で生育するラン藻や植物の高温耐性の増大させることも目指している。

2. 重金属結合タンパク質の改変と重金属耐性植物の作製
重金属を捕捉して貯蔵や無毒化するタンパク質を遺伝子工的手法によって改変し、重金属結合能の向上や、別種の重金属に対する結合能の付与など機能の改善を試みている。こうした重金属結合タンパク質をラン藻や植物で発現させて、遺伝子組み換え体による重金属に汚染された土壌の浄化や有用な微量重金属の採取を目指している。

3. 酸化ストレスに対する防御機構の解析
細胞内で発生する活性酸素は、タンパク質や核酸、脂質などの生体高分子を攻撃して様々な生理活性を阻害し、しばしば細胞の死や老化を導く。こうした酸化ストレス傷害に対して細胞は様々な手段で防御している。当研究室では、酸化ストレス傷害を修復するのに重要な役割を担うタンパク質合成系に着目し、酸化ストレスに対する防御機構を分子生物学的な手法を用いて研究している。

4. 核酸誘導体の代謝とストレス応答機構の解析
NADHなどの核酸誘導体の代謝は毒性の回避や限られた窒素化合物の有効利用の観点から有用な機構である。当研究室ではラン藻において核酸誘導体の代謝に関わる新たなタンパク質をクローニングした。その組み換えタンパク質の酵素活性や遺伝子破壊株の生育を解析し、窒素化合物の欠乏や酸化ストレスなどのストレス応答、および光合成活性との関連について解析している。

2.主な研究内容
愛媛大学理学部本館
 この研究室は1995年2月、愛媛大学理学部、化学科、機能性分子化学講座として誕生し、 現在は無細胞生命科学工学研究センター、グリーン環境エネルギー部門として、また理学部、化学科、生物化学研究室として教育研究を担当しています
1.歴史
この研究室について・・・
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