愛媛大学大学院理工学研究科 自然科学基盤プログラム(化学分野)

愛媛大学理学部理学科 化学コース

固体表面・溶液の反応物理化学

*研究の概要と目的*
 固体表面および溶液で起こる「化学反応」を精密な方法で観測して物理化学的に研究し、その成果を有用で機能的な物質や手法として社会に還元することを目指しています。

*研究テーマ*
 T.Si/Ge半導体表面・界面の価電子・内核電子状態の解明による表面・界面反応過程と機能・物性の研究
 U.表面化学状態を多方面から解析できる光電子分光手法の開発
 V.活性酸素・フリーラジカルに対抗する天然の抗酸化物質の活性の多面的な評価
 Y.活性酸素・フリーラジカルを捕捉して検出する分子プローブの開発

研究テーマの概要
T.Si/Ge半導体表面・界面の価電子・内核電子状態の解明による表面・界面反応過程と機能・物性の研究

 集積回路の高度化が進むに従い半導体素子の微細化・超薄膜化の要求はさらに高まっています。極小化・薄膜化が進んだ試料の化学状態は、私たちが住むマクロな世界で通用している古典的な考え方では説明できず、量子化学的取り扱いが必要となります。 半導体基盤に使用されているSiやGeの単結晶表面上に数原子層程度(<10Å)の超薄膜を作製し、局所的な価電子状態を薄膜表面、基盤、両者の界面を選別する精密なX線光電子分光法(XPS)で測定することで、超薄膜特有の量子効果を検討しています。 超薄膜試料・界面の価電子情報を特異的に選択した実験に成功したのは、私たちの研究グループが世界的に初めてで、今後の発展が期待できます。この実験は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)Photon FactoryやSpring-8で行っています。
U.表面化学状態を多方面から解析できる光電子分光手法の開発

 原子や分子中の電子は、特定の原子近傍に局在する内殻電子と非局在化した価電子に分類することができます。高エネルギーのX線や電子線を用いて内殻電子の励起を行うと、フェムト秒スケール内に、1)電子放出(光電子・オージェ電子)、2)多価イオン状態の形成、3)イオン解離、が連続して起こります。 この一連の反応素過程を研究するためには、これらの過程でほぼ同時に放出される電子やイオンなどの荷電粒子を2つ以上同時に検出し、その関係を結びつけることができるコインシデンス分光法(Coincidence spectroscopy)が最適です。
V.活性酸素・フリーラジカルに対抗する天然の抗酸化物質の活性の多面的な評価

 天然由来の酸化を抑制する物質(天然抗酸化剤)が、生体中で生じた活性酸素・フリーラジカルをどのように消去するのかを調べることで、活性酸素・フリーラジカルが原因として起こる老化・ガン等の病気に対する生体の防御機構や食品の劣化抑制法について研究しています。 野菜・果物,加工食品の抗酸化活性を簡単な手順で評価する方法を開発しています。レーザー光を用いた時間分解測定法で調べることにより、生体の光防御や光エネルギー利用に迫ろうとしています。
W.活性酸素・フリーラジカルを捕捉して検出する分子プローブの開発

 活性酸素・フリーラジカルは、生物組織内の局所で発生するので、その発生個所,種類,量,動態を知りたいのですが、寿命が短く反応性が高いので、直接検出して定量することが困難です。 そこで、活性酸素・フリーラジカルと特異的に反応して発光を示すような分子プローブが重宝されています。フリーラジカル等の捕捉・検出機構を工夫した便利で新しいタイプの分子プローブを設計・開発を行っています。